大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和53年(ウ)274号 決定

申立人が執行文の付与を求める原審の仮執行宣言付判決は、「被告(相手方)は、原告(申立人)に対し東京都立川市高松町二丁目一四〇番一一宅地五一・三四平方メートルについて所有権移転登記手続をせよ。」というものであり、しかも、それがまだ確定していないことは、記録上明らかである。ところで、右判決は、給付判決の一種であるとはいえ、意思の陳述を命ずるものであるが、法は、かかる意思の陳述を命ずる判決の執行につき、「其判決ノ確定ヲ以テ……意思ノ陳述ヲ為シタルモノト看做ス」としている(民訴法七三六条前段参照)。したがって、本件判決のような意思の陳述を命ずる判決は、その確定前にあっては、執行の方法がないのであるから、これについては、もともと仮執行の宣言を付することは許されないものというべきである。とはいえ、いやしくも裁判所が判決をもって仮執行の宣言をした以上、当然無効の判決のあるべき道理はないから、裁判所書記官としては、それを尊重すべきこというまでもない。しかし、前叙のごとく、民訴法七三六条がその前段において、意思の陳述を命ずる判決の執行については執行文を必要としないという建前をとり、しかも、その後段において、意思の陳述を命ずる判決については、同法五一八条二項とは別に、「反対給付ノ有リタル後……意思ノ陳述ヲ為ス可キ場合ニ於テハ第五百十八条及び第五百二十条ノ規定ニ従ヒ執行力アル正本ヲ付与シタルトキ其効力ヲ生ス」との特別規定を設けていることからみて、法は、意思の陳述を命ずる判決の執行については、意思の陳述が相手方の反対給付にかかる場合に限り、裁判所書記官に対して執行文付与の権限を与え、それ以外の場合においては、かかる権限を与えていないものと解するのが相当である。そして、本件判決の仮執行が金五万円の保証を立てることにかかっていることは、記録に徴して明らかであるが、申立人の保証を立てることが右にいう反対給付に該当しないこともまた、多言を要しないところである(同法七三六条後段、五一八条二項参照)。それ故、申立人の前記申請は、執行文を付与すべき場合に当らないものというべきである。

されば、前記書記官の拒否処分は適法であって、本件異議申立ては失当である。

(渡部 柳沢 中田)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!